かみつきハチ ⑩
苦しそうな息づかいの中から、しぼり出すような声で、
「・・・犬は、まだ?」
「そ、それが・・・」
と、言いかけたとき、誰かが
「おいッ! 犬だ、犬が来たぞお!」
と、叫んだ。
かみつきハチの目が、カッとひらいた。
「帰ってきた! やっと、帰ってきた」
よろけそうになりながら、必死で起きあがり、外にはい出ようとする。
「おい、ちがうんだって。ありゃ、別の・・・」
と、かみつきハチを抱きとめると、ちらっとふたつの小さな黒い目が見えた。
テントの中の臭いをかぐように、おずおずと鼻先を入れ、つぎに年老いて爪の先が細くなった前足を
のぞかせる。
ぼそぼそになった毛の全体が見えたころ、かみつきハチは無我夢中で、犬のそばにはいよっていた。
「・・・犬は、まだ?」
「そ、それが・・・」
と、言いかけたとき、誰かが
「おいッ! 犬だ、犬が来たぞお!」
と、叫んだ。
かみつきハチの目が、カッとひらいた。
「帰ってきた! やっと、帰ってきた」
よろけそうになりながら、必死で起きあがり、外にはい出ようとする。
「おい、ちがうんだって。ありゃ、別の・・・」
と、かみつきハチを抱きとめると、ちらっとふたつの小さな黒い目が見えた。
テントの中の臭いをかぐように、おずおずと鼻先を入れ、つぎに年老いて爪の先が細くなった前足を
のぞかせる。
ぼそぼそになった毛の全体が見えたころ、かみつきハチは無我夢中で、犬のそばにはいよっていた。