かみつきハチ ①
渋谷に、かみつきハチとよばれるホームレスがいた。
まだ若い男だ。
かみつきハチは、いつも一人で行動している。誰とも口をきかない。
青ビニールを張ったテントのよこに、ダンボールでつくった犬小屋をちょこん、とおいている。
犬小屋からのびたクサリの先に・・・、犬は、いない。
ある日のことだった。
若い男が可愛がっていた野良犬が、保健所の職員に捕まりそうになった。若い男は保健所の職員めがけて猛ダッシュすると、犬を自分のほうへ連れ戻した。
おびえる犬、野次馬の人だかり。
保健所の職員は、
「住所不定の人間に、飼い主の資格はない」
と、冷たく言い放つと、そのまま犬を車のなかに押しこめようとした。
次の瞬間、ガブリッ。
骨までかじったような音がした。
まだ若い男だ。
かみつきハチは、いつも一人で行動している。誰とも口をきかない。
青ビニールを張ったテントのよこに、ダンボールでつくった犬小屋をちょこん、とおいている。
犬小屋からのびたクサリの先に・・・、犬は、いない。
ある日のことだった。
若い男が可愛がっていた野良犬が、保健所の職員に捕まりそうになった。若い男は保健所の職員めがけて猛ダッシュすると、犬を自分のほうへ連れ戻した。
おびえる犬、野次馬の人だかり。
保健所の職員は、
「住所不定の人間に、飼い主の資格はない」
と、冷たく言い放つと、そのまま犬を車のなかに押しこめようとした。
次の瞬間、ガブリッ。
骨までかじったような音がした。